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グルメ漫画は切り口を変えるといくらでも記事が作れるジャンルだ。深夜に効くやつ、安く読むやつ、系統別に並べるやつ。ただ切り口ごとに分けると同じ作品が何度も出てきて、読む側にとっては一本にまとまっていたほうがいい。だからここで全部まとめて、グルメ漫画40作を一枚に並べ直すことにした。
順番に優劣はつけていない。星の数もやめた。代わりに「どういう夜に、どういう状態の人がどれを開くか」で章を切っている。グルメ漫画は、作品の出来より読むタイミングとの噛み合わせで体験が決まるジャンルだからだ。深夜にひとりで布団の中にいる人と、明日の献立を決めたい人に、同じ1作を薦める意味はない。
- まず、40作をどう選んで、何を外したのか
- 深夜0時を回ってから、ひとりで布団の中で読むならどれか
- 読んだあと台所に立ちたい、明日の献立を決めたい人はどれか
- 厨房の熱と勝負の緊張を浴びたい夜はどれか
- 食戟のソーマ|派手な演出と料理の理屈が同じ作品に同居している
- 鉄鍋のジャン!|勝つためなら手段を選ばない主人公で押し切る
- 中華一番!|完成した料理が光る演出で食欲を殴ってくる
- ミスター味っ子|味皇のリアクションで料理漫画の文法ができている
- 将太の寿司|シャリの握り方一つで勝敗のドラマが立つ
- 焼きたて!!ジャぱん|リアクションはギャグ、パンの描写は本気
- ザ・シェフ|店を持たない料理人が依頼ごとに厨房へ入る
- 美味しんぼ|究極と至高の対立構造があるから途中から入れる
- ラーメン発見伝|一杯の裏にある商売の論理まで見せる
- ラーメン才遊記|主人公が変わってテンポが上がった続編
- 信長のシェフ|使える食材が限られている状態で現代の技を出す
- 酒を注いでから、肴の話だけ読みたい夜はどれか
- 現実にない飯で腹を鳴らされたい人はどれか
- 甘いものが食べたいのに店が閉まっている夜はどれか
- グルメ漫画を読むつもりがないのに飯テロを食らうのはどれか
- 40作から最初の1作を選べない人はどうするか
まず、40作をどう選んで、何を外したのか
選定基準を先に開示しておく。ここを飛ばして作品リストだけ並べると、結局「有名なやつを順番に置いただけ」になる。この40作をどう篩にかけたかを書いておけば、合わない章は読み飛ばしてもらえる。
基準は「読み終わったあと、読んだ人が動くか」の一点にした
台所に立つか、コンビニまで歩くか、翌日その店を検索するか。読後1時間以内に行動が変わりうるかどうかだけを見て並べている。だから「絵が上手い」「話が良い」は基準に入れていない。感心して終わる作品は、この記事の趣旨だと弱いからだ。
巻数の多さと、映像化されているかどうかは基準から外した
長く続いている作品は入口が重いし、映像化されているかどうかは作品の飯テロ威力と関係がない。ただし映像のほうが効く作品はあるので、そこは該当作の説明に書いた。逆に、読む前に何巻あるかを気にして止まるくらいなら、1話完結のものから開けばいいと思っている。
外したのは、高級店の一皿で完結する作品と、シリーズの続編の別枠立て
高級フレンチや一皿数万円の世界だけを描く作品は、「すごいな」で終わって腹が減るところまで行きにくい。縁がないものは食欲に変換されにくいと判断して、今回は入れていない。あと、続編を別作品として数えて水増しするのもやめた。ただ『ラーメン発見伝』と『ラーメン才遊記』だけは、主人公が変わってテンポまで変わっているので、例外的に2作として並べている。
深夜0時を回ってから、ひとりで布団の中で読むならどれか
一番危険な状況から始める。この時間帯に効くのは、豪華な料理ではなく「今から手が届くもの」だ。だから高級店ものより、定食屋とコンビニと自宅の冷蔵庫が主戦場になる作品を集めた。読む前に何か飲み物を用意しておいたほうがいい。
孤独のグルメ|「腹が、減った」の一行が引き金になる
輸入雑貨商の井之頭五郎がひとりで飯を食うだけで、事件も成長もない。それでもあの独白の形式が、読み手の空腹と直結する作りになっている。この40作の基準点にこれを置いているのは、店を選ぶところから食べ終わるまでを一人称の内心だけで通す構造が、そのまま「今から自分も行ける」という距離感を作っているからだ。
深夜食堂|赤いウインナー一本で判断力が落ちる
新宿の路地裏の「めしや」でマスターが客の注文どおりに作るのは、赤いウインナーや卵焼き、お茶漬けといった、家でも作れるものばかり。深夜には料理の豪華さが効かなくなり、むしろ手が届くものほど食べたくなる——この章の前提がそのまま形になった一作だ。
めしぬま。|料理ではなく「食べている人」で腹が減る
無口な青年めしぬまくんが飯を食う姿を、同僚の女性がひたすらガン見するという構成で、料理の絵より食べっぷりそのものが主役になっている。飯テロの正体を「食べる側の表情」に置くなら、この作品がその一番わかりやすい実例で、深夜に開くと咀嚼の描写まで効いてくる。
忘却のサチコ|食べている間だけ痛みが消える構造が効く
結婚式ですっぽかされた編集者のサチコが、食べている間だけ失恋を忘れられる、という構造で食べ歩きを続ける。深夜の食欲が空腹ではなく気分の落ち込みから来ているとき、この構造はそのまま噛み合う。心当たりのある夜にはこれを先に薦める。
食の軍師|注文の順番という誰も気にしない一点を真剣にやる
定食や居酒屋のメニューをどの順番で食べるかを戦に見立てて、脳内で勝手に軍議を開き、勝手にライバルと張り合う。読んだ人の注文の仕方そのものを変えにくる作品なので、行動が変わる度合いでいえば40作の中でも上位に置いた。
花のずぼら飯|深夜に本当に再現できるメシしか出てこない
夫が単身赴任中の駒沢花が、マヨ卵ごはんのような手間ゼロで背徳感だけ高いものを、恍惚とした顔で食う。深夜の危険度だけで順位をつけるならこれを1位に置く。作れてしまう料理しか出てこないので、逃げ道が用意されていない。
山と食欲と私|外で食う飯のロマンだけで腹が減る
単独登山が趣味の日々野鮎美が山頂で食べるカップ麺やベーコンエッグ、アヒージョが、平地で食べるのとまったく別の食べ物に見えてくる。食欲だけでなく週末の予定まで動かしにくるタイプなので、インドア寄りの人ほど влияние が大きい。
めしばな刑事タチバナ|コンビニとチェーン店の話だけで一冊持たせる
刑事が取調室や休憩室でひたすら「めしばな」を語り続け、カップ焼きそばの話だけで一冊を使いきる狂気がある。深夜に開いている店がコンビニしかない、という状況と噛み合いすぎるので、この章に入れないと嘘になる。
読んだあと台所に立ちたい、明日の献立を決めたい人はどれか
ここから先は「食べたい」より「作りたい」に効く章だ。飯テロとしての瞬発力は前章より落ちるかもしれないが、実害は長く続く。読んだ翌日にスーパーで余計なものを買うのは、だいたいこの章の作品のせいだ。
きのう何食べた?|レシピの粒度が「今夜できる」ところで止まっている
弁護士のシロさんと美容師のケンジの食卓が中心で、特売のもやしをどう使うかという水準の、節約しながらの家庭料理が並ぶ。工程が今夜そのまま再現できる粒度で書かれているので、40作のうち食費の使い方まで動かしうるのはこの作品だ。
クッキングパパ|どの巻から開いても今夜の献立が拾える
料理上手な会社員のパパが家庭料理を作り続けるだけで、1話完結だからどの巻から読んでも話が成立する。「通して読む」前提を捨てられる作品はこの章では貴重で、夕方に気になった巻だけつまみ食いする使い方ができる。
甘々と稲妻|作り手が初心者側から始まるので工程が飛ばない
妻を亡くした高校教師が、娘のつむぎと教え子の女子高生と一緒に料理を覚えていく話で、ホットケーキや餃子のような入口の料理をきちんと一段ずつやる。作る側が慣れていないから手順が省略されないので、自炊を始めたばかりの人に渡すならこれを選ぶ。
八雲さんは餌づけがしたい。|献立が「つまみ寄りの家庭料理」に振れている
未亡人が近所の男子高校生に手料理を振る舞う話で、出てくるのが主菜より一品ものに寄っているのが、他の家庭料理ものと違うところ。甘い空気より献立のほうが持ち帰れる作品なので、副菜と酒の肴を同時に増やしたい人向けにここへ置いた。
厨房の熱と勝負の緊張を浴びたい夜はどれか
料理を「技術」と「勝負」として描く章。飯テロ強度は作品によってばらつくが、読み応えでいえばここが一番厚い。翌日が休みの夜に開くのを勧める。一気に走り切れる構成のものが多いぶん、寝る時間を確実に削られる。
食戟のソーマ|派手な演出と料理の理屈が同じ作品に同居している
料理人を育てる名門校での対決が軸で、食べた瞬間のリアクションばかり語られるけれど、悪魔のおにぎりのような作中料理は監修が入っていて理屈が通っている。実際に再現できる手順として成立しているので、ふざけているのは演出だけだと言える。
鉄鍋のジャン!|勝つためなら手段を選ばない主人公で押し切る
「うまけりゃ官軍」を地でいく主人公が、料理対決でトリック合戦を仕掛けてくるので、感動ではなく緊張で読ませてくる。万人に薦められない代わりに、王道の料理漫画に飽きた人にとっては代替のない一作だ。
中華一番!|完成した料理が光る演出で食欲を殴ってくる
マオが中華料理人として成長していくバトルもので、料理が完成した瞬間に光り輝く演出と、中華のダイナミックさの相性がいい。読み終えたあと向かいたくなるのが高級店ではなく近所の町中華なので、この章では一番ハードルが低い。
ミスター味っ子|味皇のリアクションで料理漫画の文法ができている
味皇のリアクション芸と、時代を先取りした料理の発想が同居していて、料理バトルという型がここで組み上がったのがわかる。この章の他の作品がなぜあの演出をやるのか、その出どころを確かめたい人のために入れた。
将太の寿司|シャリの握り方一つで勝敗のドラマが立つ
寿司職人を目指す少年の成長譚で、ネタの派手さではなくシャリの握り方や一貫の仕上げに勝負の焦点が置かれている。読み終わるとスーパーのパック寿司で満足できなくなるという実害があるので、そこは覚悟してほしい。
焼きたて!!ジャぱん|リアクションはギャグ、パンの描写は本気
日本のパン「ジャ・パン」を作る少年の物語で、食べた人のリアクションだけが完全にギャグの方向へ振り切れている。それでもパンそのものの絵は手を抜いていないので、笑いながら腹が減るという珍しい状態に持っていかれる。
ザ・シェフ|店を持たない料理人が依頼ごとに厨房へ入る
フリーランスの料理人・味沢匠が依頼を受けて料理をする1話完結形式で、対決よりも依頼人の事情のほうが物語を動かす。勝負メシの熱量より人情の比重が高いので、この章の中では一番落ち着いた気分で読める。
美味しんぼ|究極と至高の対立構造があるから途中から入れる
「究極のメニュー」を巡る探求が軸で、究極対至高という対立の形が決まっているから、どの回から読んでも自分の位置がわかる。好きな食材の回だけ拾い読みする読み方を薦めたい作品で、通読を前提にしないほうが結果的に長く付き合える。
ラーメン発見伝|一杯の裏にある商売の論理まで見せる
サラリーマンがラーメン業界で立ち回る話で、「客はラーメンを食ってるんじゃない、情報を食ってるんだ」という芹沢の台詞はこの作品から出ている。読み終えると行きつけの店のスープに対する解像度が上がるので、飯テロと実用の両取りになる。
ラーメン才遊記|主人公が変わってテンポが上がった続編
前作から主人公が汐見ゆとりに移り、うんちくより展開の速さで押してくるので、勢いのまま走り切れる。発見伝を読んで業界側の話をもっと欲しくなった人の次の1作として、シリーズの続きではなく独立した選択肢として並べた。
信長のシェフ|使える食材が限られている状態で現代の技を出す
現代の料理人が戦国時代にタイムスリップして織田信長に仕える話で、当時手に入るものだけで現代の料理を成立させる工程が読みどころ。制約が厳しいほど工夫が面白くなるタイプなので、飯テロより先に知的な満足がくる。
酒を注いでから、肴の話だけ読みたい夜はどれか
酒漫画は「酒そのもの」より肴が主役になることが多い。だから酒に強くない人間でも、つまみの側から普通にやられる。この章は1話が短い作品を意識して選んだ。飲みながら読むなら、区切りが細かいほうが都合がいいからだ。
ワカコ酒|1話が短いから一杯の時間にちょうど収まる
26歳のOLワカコが仕事帰りに一人で居酒屋へ寄り、肴と酒を楽しんで「ぷしゅー」と息を吐くだけの構成。1話の長さが晩酌のペースと噛み合うので、酒を注いでから開く1作としてこの章の筆頭に置いた。
酒のほそ道|季節ごとに「この肴とこの酒」の組み合わせが増える
岩間宗達が四季の肴と酒を追い続けていて、花見酒や冷奴、おでん、栗の渋皮煮といった組み合わせが具体的に提示される。晩酌のレパートリーが実際に増えてしまうので、この章では一番実害が大きい作品だと思っている。
居酒屋ぼったくり|料理より常連客の事情のほうが濃い
姉妹で営む居酒屋に集まる常連客の群像で、季節の料理と日本酒の合わせ方が丁寧に描かれる。日本酒を普段飲まない人に銘柄と肴の対応を教えてくる作りなので、行きつけの店が欲しくなる方向に効く。
現実にない飯で腹を鳴らされたい人はどれか
存在しない料理で腹が減る、という妙な現象を起こしてくる章。魔物でも異世界でも、腹が減るときは減る。ここ数年でいちばん作品が増えたジャンルで、同じ「異世界×飯」でも効き方がはっきり違うので、その違いを書いておく。
ダンジョン飯|食えるはずのない食材に理屈がついている
大サソリと歩き茸の水炊きのように、字面だけなら地獄の料理が並ぶのに、生態や栄養の理屈づけが緻密だから食べ物としてちゃんと成立してしまう。2024年のアニメで一気に広がったけれど、飯として効くのは原作の描き込みのほうだと思っている。
異世界食堂|出てくるのがカツ丼とオムライスという反則
週に一度だけ異世界とつながる洋食店が舞台で、異世界の客が食べるのはカツ丼やオムライス、エビフライという馴染みのものばかり。異世界人が初めて食べて感動する場面を経由するせいで、食べ慣れた料理が初対面の味に戻ってしまうのがずるい。
とんでもスキルで異世界放浪メシ|野外調理と使い魔の食いっぷりで押す
現代の食材を取り寄せられるスキルで旅先で料理する話なので、からあげや牛丼のような身近なメシを外で作る場面が多い。使い魔のフェルが唸りながら食うところが飯テロ装置として機能しているので、キャンプ飯が好きな人ほど深く刺さる。
異世界居酒屋「のぶ」|「トリアエズナマ」とお通しの文化が異世界に通じる
異世界の街につながった居酒屋が舞台で、「トリアエズナマ」が神の飲み物のように扱われ、お通しの習慣まで現地に受け入れられていく。からあげや枝豆、おでんと冷酒が並ぶので、この章で唯一、酒の肴としても使える。
迷宮グルメ 異世界に巣喰う|同じ魔物食でもワイルドな方向に振れている
魔物を狩って食う系の中では、調理の理屈より「狩って豪快に食う」側に寄っていて、満足感の出し方がダンジョン飯とは別物になっている。ダンジョン飯を読み終えて次を探している人のための一作として、ここに置いている。
甘いものが食べたいのに店が閉まっている夜はどれか
甘いものは深夜の判断力を確実に削る。しかもスイーツものは、飯と違って自宅で再現しにくいぶん、欲求が処理されず翌日まで残る。この章だけは、読んだ翌日に遠くの店まで買いに行く覚悟をしておいたほうがいい。
西洋骨董洋菓子店|ケーキの絵と人間関係のどちらも手を抜かない
クセの強い4人の男が営む洋菓子店の群像劇で、ケーキやタルト、シブーストの描写が上品なぶん、甘いものへの欲が静かに上がっていく。実質は「スイーツの顔をした人間ドラマ」で、甘味目的で開いても人物のほうが記憶に残る作りだ。
であいもん|和菓子の繊細さと京都の空気で洋菓子疲れを流せる
京都の老舗和菓子屋を舞台にした家族と再生の話で、和菓子の細かい仕事と店のある町の空気が同時に入ってくる。洋菓子が続いて胃が重くなったときの箸休めとして、この章に和菓子を1作入れておきたかった。
夢色パティシエール|スイーツの輝きの描写が反則級
パティシエを目指す女の子の成長物語で、少女漫画寄りの絵柄でスイーツが輝く描き方をしてくる。絵柄で対象読者を限定されがちな作品だが、スイーツの描写の強さだけで見れば外す理由がないので、絵柄を理由に避けている人にこそ薦めたい。
だがしかし|高級スイーツの真逆から甘いもの欲を突く
うまい棒やヨーグルといった、誰でも食べたことがある駄菓子のうんちくを全力で語り倒すコメディ。甘いものが欲しい夜に、財布も罪悪感もほとんど傷まない選択肢を出してくれるのは、40作の中でこれだけだ。
失恋ショコラティエ|チョコの露出は少ないのに欲だけ残る
ショコラティエの男が失恋を引きずりながら腕を上げていく話で、チョコが出てくる場面自体は多くないのに、出るたびにボンボンショコラが欲しくなる。甘味より恋愛漫画としての比重が高いので、この章では一番「読み物」寄りの一作になる。
グルメ漫画を読むつもりがないのに飯テロを食らうのはどれか
最後は、書店のグルメ棚に置かれていない作品を集めた。冒険活劇や学園ものや青春ギャグとして読み始めるぶん、防御態勢を取っていないところに飯の場面が飛んでくる。油断しているときの被害は、構えて読む作品より大きい。
トリコ|食材を狩りに行くという発想でスケールが振り切れている
食材を求めて狩りに出るという構造で、出てくる料理のスケールが他の39作と一桁違う。飯テロというより食の冒険なので毛色は外れるが、グルメ漫画の範囲を語るのにこれを外すほうが不自然だと思って入れた。
ゴールデンカムイ|冒険活劇の顔をして飯の場面が濃い
明治の北海道を舞台にした冒険活劇なのに、アイヌ料理のチタタプやリスの脳みそ、軍隊飯まで、食事の場面が異様に濃い。「ヒンナヒンナ」と言いながら食う場面の印象が強く、グルメ棚にないぶん不意打ちの威力が高い。
もやしもん|食べたくなる対象が料理ではなく発酵になる
菌が見える大学生が主人公の農大もので、日本酒やチーズ、くさやが「菌の仕事」として説明されていく。読み終わると味噌汁が飲みたくなるという、料理単位ではなく発酵という現象に食欲が向く唯一の作品だ。
とんかつDJアゲ太郎|フライヤーとフロアを重ねる構成が効いている
とんかつ屋の息子がDJを目指す、という字面だけ見れば意味不明な作品だけれど、揚げる描写とフロアを盛り上げる描写が重なっていく構成が効いている。ネタ枠として扱われがちなぶん、揚げ物の絵の強さは舐めている人ほど深く食らう。
40作から最初の1作を選べない人はどうするか
ここまで並べておいて言うのもなんだが、40作を眺めて選ぶのは無理だ。人に薦めるなら2択までに絞るべきだと思っている。だから最後に、選び方そのものを置いておく。
最初の1作は、孤独のグルメかきのう何食べた?の二択でいい
外食で腹を鳴らされたいなら前者、自炊のほうへ引っ張られたいなら後者。この2作は飯テロの方向が真逆なので、どちらが効いたかで自分の好みの側がわかる。効いた側の章に戻って、同じ章の作品を掘っていくのが一番外さない。
読む時間帯は、開く前に自分で決めておいたほうがいい
この記事の章分けは、そのまま「何時に読むか」の指針になっている。台所に立てる時間なら家庭料理の章、翌日が休みなら厨房ものの章、明日の朝が早いなら甘いものの章は避ける。体重の話をするなら、昼に読むのが唯一の防御策だ。
読む場所は、思い立った深夜に開けるほうへ寄せて選ぶ
深夜に読みたくなるジャンルなので、その場ですぐ開けるかどうかが体験の質を決める。だから紙より電子を前提に選び方を書いておく。1話だけ試したいなら無料で読める話数が多いまんが王国、シリーズをまとめて揃えるならクーポンが効くebookjapan、対象作品を片っ端から読むならKindle Unlimitedの読み放題、という振り分けになる。映像化されている作品はU-NEXTやDMM TVで探せることが多いので、漫画で腹を減らしてから映像で追い打ちをかけるのもいい。
40作を一枚に並べ直してはっきりするのは、グルメ漫画に共通しているのは料理の豪華さではなく「食べている人が本気でうまいと感じている」という一点だけだということだ。そこが描けている作品は、題材が魔物でも駄菓子でもカップ焼きそばでも腹が減る。今夜どれを開くかは、気分と時間帯で決めてほしい。そして念のため、何か飲み物だけは手元に用意しておいたほうがいい。


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